画家 軽部武宏の日記

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血圧と作風

僕は寒いのが苦手だ。寒いとすぐに手がかじかんでくる。かじかむと絵を描く時、とても困る。上手く手が動かない。気分よく描けないのは嫌なので暖房を入れたりするのだが、初夏みたいに外気温がきちんと高い時とは違って空間に温度むらが出来てしまう。室温は同じなのに今ひとつ晴々しない。だから冬場は冬眠してるようなもんで、色々描きはじめてもメッポウ時間がかかる。寒さに強い人が心底羨ましい。おまけに男にしては珍しく低血圧で貧血気味なので朝、スカッと目覚められず、暫くは頭の中が真っ白。一時期気になって医者に相談した事があるのだが、一言『気合いデスヨ。キアイ。』で片付けられてしまった。

一寸考えてみるに、この血圧って表現者の作風と関連が有るのではないか。僕は作品を観た人から、『北の方、出身ですか?』と聞かれる事が多い。その度、『東京下町生まれです』と答えているのだが余り納得していない様子で、『じゃ、北国の風景ですよね』などと謂われてしまう。先日の個展で発表したのは九割方、水郷と呼ばれる茨城県霞ヶ浦水系を舞台に(しかも梅雨時期)したものなのに、アイヌっぽい、寒々しいと感ずる人もいたようだ。何故だろ〜か。その時、ふと血圧という言葉が頭に浮かんだ。僕は暑いのがへっちゃらで炎天下にも割と強い。周囲の人がアツイアツイ騒いでいてもそんなに暑いか?と思ってしまう。梅雨時の暖かい雨の中もそれほど蒸し暑くない。むしろ蛙が喜んでいるし、傘をさして霧雨でけぶる町中を歩く人はとても絵になるので大好きな風景だ。そういえばバリ島に行った時も延々雨の中を歩いたがヘーキであった。もし、人間の身体に暑い寒いの標準となる標準沸点があるとすれば、僕のそれはかなり高めに設定されているのではないか。気温が標準沸点に近ければ近い程その人にとって過ごしやすいのであり、離れていれば厳しいものとなるのでは…。だとすると例えば気温20度の同じ風景の前に立ってみたとして、僕は特に寒々しく眺めているのに周りは快適に眺めているってことになり、それを僕が絵にすると観た人は20度以下、10度位の気温の風景と感じてもおかしくない。血圧が低いと標準沸点は高目なのではないかと思うのだが医学的にはどうなのだろう。