画家 軽部武宏の日記

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船浮集落

割高、混み々の大型連休が終わった頃、西表島に向かった。と言っても目指すは陸の孤島の船浮集落。連休とか関係なく訪れる旅人は少ない。この時期、沖縄奄美地方には早い年だと台風1号がやって来るので、低気圧の北上タイミングによっては旅程がメチャクチャになる。まあ、現地での旅程変更も旅の醍醐味という考えなので、命に関わるような危険な状況でない限りそれなりに楽しめる質ではある。その時は「こりゃひでぇな、ありえねえ」としか感じない出来事も、東京に戻ってから例えば移動中の電車の車窓から排ガスで埃色に染まったビルの屋上バルコニーに干された洗濯物が春の大風に健気にたなびくのを眺めている時に「あれはあれで案外悪くない」などとふと思い出したりする。

石垣港から大原港へ。大原港でレンタカーを借りた時点で15時半を過ぎていた。

僕は昔から蛇が怖い。生き物と関わる事を好む人生を送ってきたし、かつて苦手だった種類もヘーキになったり、逆に好きになったり様々だが、何故か蛇だけは中々恐怖心を克服出来ないでいる。西表には毒蛇王ハブ様がいる。亜熱帯の湿気で汗だくになってもビーサンで林道を歩くなんて考えられない。半ズボンで川岸に?有り得ん。そんな訳だから必要以上に足廻りを固めてしまうし、さらに60Lのザックを担いで歩いるもんだから土地の人にはすっかりジャングルを縦走するワイルドキャンパーと勘違いされ「ちゃんと国土地理院の地図、持っとんのか?」と心配される始末。ジャングルに入ったまま行方不明になっている人が何人もいるらしいのだ。

翌朝、白浜発8:35の船に乗るため港まで時速40キロでぶっ飛ばした。イリオモテヤマネコ等のロードキル防止の為、現在島内走行40キロ速度制限を設けている。船浮港から集落を抜け、多種の蝶が舞う林道を歩き、イダの浜に到着。ずっと昔から変わらずそこに在るであろう風景を目の前にすると決まって押し寄せてくるこの感覚。体中の毛細血管が少し捩れてうねり始め、遠い未来と遠い昔を結ぶ景色変わらぬ一本道が出現し、その路上を歩く嬉しさよ。

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