画家 軽部武宏の日記

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加計呂麻島

奄美空港に着陸したのは午後2時30分過ぎ。昨年の7月以来2度目の入島だ。

一年経ってない…。

ボーディングブリッジから一気に上がる湿度とロビーのブーゲンビリアの匂いに包まれるとまたこの島に来れた嬉しさが腹の底から込み上げてくる。

旅で訪れた土地を去る時、もう来ないだろうとか、また来るだろうとか様々な思いが脳裏をめぐるが奄美に関しては昨年去る時また近いうちに訪れるだろうと予感していた。

亜熱帯気候の中で全感覚を解放する楽しさに取り憑かれたのかもしれない。

今回は奄美大島の58号線を一気に南下し瀬戸内町から船で加計呂麻島島に渡る。

でいご並木を抜け徳浜に向かったのだが、ここではちょっとしたアクシデントが起きた。

 

突然車が動かなくなる。

誰も人が居ない。

携帯が使えない。勿論公衆電話もない。

人気のない民家が数件あるだけ。

見えるはターコイズブルーの海とマットパールの砂浜、

聞こえるはムラサキオカヤドカリの足音…。

東京では中々味わえない状況だ。

バッテリーが上がった訳ではないのにエンジンがかからない。

その内誰か来るだろうと周辺をブラブラ歩いて偵察。

1時間、2時間、誰も来ない。段々日が傾いて来た。

今夜は加計呂麻に宿泊予定だが宿に電話も出来ない。

参ったな…。

仕方ない。片っ端から民家の玄関口に立つと、大声で呼びかけてまわった。

「誰かいませんか〜」

一軒、二軒と応答はない。残る三軒目も何の反応もない。

諦めて玄関口から立ち去る時、何気なく家の裏手に顔を向けてみると原付が止まっているではないか。埃をかぶった廃車などではなく今さっきまで乗っていたような感じだ。誰かいるのかもしれない。望みをかけもう一度大声で呼びかけてみる。

「誰かいますか〜」

「・・・」

応答はないが諦めきれない。もう一回。

「だっ、誰かいますかー」

ん?何か家の中から物音がした気がする。

10秒後。

「おお〜う、今開けっからな〜」

内鍵を解き引き戸を開けて、日に焼けたオッチャンが現れた。

 

続く