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川端

東京駅からのぞみに乗り込み米原へ。琵琶湖の畔のとある集落に行ってきた。綺麗な水がゴンゴン湧き出す町で、昨年国営放送のカメラが入ったので知っている人も多いと思う。僕は放送を見るなり胸が熱くなり、ここを訪れねばならないと決意しすぐに旅程を組んだ。折角行くなら水路の水草が繁茂している時期が良いので夏が終わるのを待ったのだった。

町に到着し町役場横の水車の傍をうろうろしていたら、優しそうな爺さんに出会ったので事情を話すとわざわざ東京からこんな辺鄙な所へよく来てくれたと、集落を案内して頂ける事になった。水質がよほど良いのか爺さんの頬はツルツルでとても82歳には見えなかった。飲み水や洗顔水など日常生活に使用する水の質が体に与える影響は大きい。

水に俟つわる場所をあちこち案内してくれ最後には川漁師の御自宅にもおじゃまさせてもらった。川端(かばた)と呼ばれる湧き水を利用した生活に密着した水場が各家庭にあり、それらが今も現役で使用されている事に驚嘆した。爺さんは中に入ってよく観なさいと扉を開けてくれるのだが爺さんの家ではない。小さな町なので、知り合いなのは解るが、他人の家の川端、台所のような所へ断りなくズカズカ入っていくので、少し心配になった。しかし川漁師は特に気にする事なく「おうっ」と手を挙げただけで夕方の漁に備えて網の手入れ続けていた。

その後も周辺を歩いたがそこかしこに川端があり、脇の一寸した水路でも水草が棚引き流れ、合間をヨシノボリが泳いでいて、立ち止まると水音だけが聞こえてきた。その時、つげ義春の漫画のワンシーンが脳裏を霞めたのだった。

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